きのう、こんな記事を書きました。
友人に「農業って、どのくらい稼げるの?」とよく聞かれるんですが、「農業=自営業者なので、稼ぎはピンキリですよ。あなた次第です」という内容を書きました。
すると、読者の方から貴重なご意見をいただきました。
納得しました。ただ、実際問題として、〇〇万以上稼ぐ農家は全体の何割いて、〇〇万以上稼ぐ農家は全体の何割いるみたいな年収分布の実態は知りたくなりますね。
おっしゃる通りです!独りよがりで記事を書いていると、結論ありきになってしまっていけませんね😌
わたしも気になったので、早速調べてみました。
今回は、こちらの質問に回答しながら、新規就農して生計が成り立つまでにどのくらいの年月がかかるのかについて、お伝えしようと思います。
- 全国新規就農相談センターの調査結果
- 「生計が成り立っている」は24・5%
- 生計が成り立つまでの年数は?
- 新規就農者の所得分布を見てみましょう
- 所得が低いのに、生計が成り立つ不思議
- お読みいただき、ありがとうございました😊
全国新規就農相談センターの調査結果
調べたところ、全国新規就農相談センターの「新規就農者の実態に関する調査結果」(平成28年度)の中にその答えが見つかりました。
以下、こちらの調査結果を基に、新規就農者はいったいどのくらい稼いでいるかについて掘り下げていこうと思います。
リンク:https://www.be-farmer.jp/service/statistics/pdf/OChagC5X8b3V3NsIcbsm201704071333.pdf
「生計が成り立っている」は24・5%
まず、農業所得で生計が成り立っている新規就農者の割合から見ていきましょう。
「おおむね農業所得で生計が成り立っている」とした人の割合は24・5%。残りの4分の3の人たちは、農業所得では生計が成り立たないと答えています。
いきなり、衝撃的な結果です😐
ただし、「農業所得による今後の生計の目処」に関しては、72・7%の人が「今後、目処が立ちそうだ」と答えており、「目処が立ちそうな時期」は平均2・7年という回答結果も添えられています。
また、「所得不足分の補てん方法」(複数回答)は、最も多い41・3%の人が「青年就農給付金」(現・農業次世代人材投資資金)とし、「農業以外の収入等」(21・9%)、「就農前からの蓄え」(21・3%)と続いています。
国からの補助金である「農業次世代人材投資資金」については、以下の記事で詳しく解説しています。
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それにしても、生計が成り立っているのが全体の4分の1というのは厳しい結果です。
ただ、「農地も人脈も機械もない新規就農者が短期間で結果を出すのは相当難しいだろうな」というわたしの実感からしても、かなりリアルな調査結果に思えます。
生計が成り立つまでの年数は?
では、生計が成り立つまでに必要な年数はどのくらいなのでしょうか。
一番左の全体結果を見ますと、「1・2年目」(14・6%)、「3・4年目」(24・9%)と年数が長くなるにつれて増えていき、「5年目以上」で48・1%に達します。
北海道とその他の都府県を比べると、その差は歴然としていますね。
続いて、農業所得で生計を立てている人がそれに要した年数をまとめた表がこちらです。
興味深いことに、429人のうち、過半数の220人(51・3%)は「1・2年目」で生計を成り立たせてしまっています。
つまり、就農後まもないこの時点で新規就農の成否が分かれてしまっていることが分かります。
生計が成り立っている経営の販売金額は886万円で、農相所得は287万円となっています。酪農を除いては、生計が成り立っている割合は、どれも高くない印象を受けます。
新規就農者の所得分布を見てみましょう
最後に、新規就農者の農業所得の分布がどうなっているか、年数・作物別に見てみましょう。
全体を見ると、「100以上300未満」の層が最も厚く、「1・2年目」(19・6%)、「3・4年目」(33・1%)、「5年目以上」(39・0%)と伸びていっています。
ただし、「1・2年目」に関しては、「0未満」(マイナス、つまりは赤字経営)が最高の21・8%を占めています。農業経営の難しさを数字が物語っている気がします。
一方、300万以上の所得を得ている割合は全体のわずか9・8%です。
品目別でも、特徴が表れています。
「酪農」は「1以上300未満」の中間層はおらず、所得がマイナスと高額の二極化が見られます。
「果樹」や「施設野菜」は、赤字経営の割合が比較的少なく、「100以上300未満」の中間層が厚めです。
所得が低いのに、生計が成り立つ不思議
皆さん、どう思われましたか。「想像した以上に、新規就農は厳しいんだな」という印象をお持ちになった方が多いかもしれません。
ただし、注意すべき点が1つあります。
自営業者は、サラリーマンと違って、所得を必要以上に高く見せたがりません。
事業所得というのは、言い換えれば、課税所得なわけです。つまり、所得が高すぎると、その分税金を取られてしまう。
だから、生活が不安定な自営業者ほど、経費を漏らさず計上して、所得を抑えようとします。
自宅を事務所代わりにしていれば、電気代も水道代もみな経費です(私用5:事業用5のように按分します)。携帯電話代、インターネット代も同様です。
農業は、生活と仕事が一体なので、生活費の一部が経費に回ります。だから、見掛けの所得が低くても、意外と豊かに暮らしていたりもします。
このあたりも、サラリーマンとは違う思考回路なんですよね。
お読みいただき、ありがとうございました😊
脱サラ新規就農者の場合、前職の経験を生かして、第2の収入を得るという手もあります。
わたし自身、農業を営みながら、自分のやりたいことをする「半農半X」という生き方を目指しています。
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